舩越園子のGOLF JOURNAL - ゴルフのクチコミサイト【Go!Gol.】
2007年06月30日
全米女子オープンは雷による中断続きで、進行状況がメチャクチャだが、大山志保が暫定8位タイと健闘している。今日2日目は、早朝に第1ラウンドの残り5ホールをプレーし、その後、第2ラウンドへ突入。しかし、17番グリーンでパットを始めようとしたところでサスペンデッドを伝えるホーンが鳴った。
とりあえず近くで待機してくれと大会側から伝えられた大山。近くにたまたまいたギャラリーが連れていた幼い3人の子供を見て「かわいい!」と寄っていった。サインボールをあげたりして遊んでいたら、その様子を日本の新聞社のカメラマンがパチリ。その瞬間、その場にいた日本のカメラマンが全員、ものすごい勢いで大山と子供を取り囲み、バシャバシャバシャ!!
撮影するのが仕事だから、責めるつもりは毛頭ないが、その撮影シーンを眺めていたら、なんかこれって変じゃないかな、と思い始めた。近くを通りかかった別のギャラリーいわく、「どこかの有名人の子供たちなの?」そんな疑問を抱くのも当然だ。総勢10人近いカメラマンが一斉にシャッターを切っているのだから、単に選手を撮っているというより、3人の子供たちを撮っていると感じるだろう。あるいは、有名な3人の子供と遊ぶ選手の絵?
私の相棒カメラマンのJJ田辺も、その一陣にいたのだが、途中でニタニタ笑いながら一陣から出てきた。「なんか違いますよね?」そう、なんか違う。でも、どうして撮ったの?「みんなが撮っているからですかねえ。みんなも、みんなが撮っているから撮ったんですよねえ」
うーん、わかる部分もあり、頷けない部分もある。みんなが撮るものを自分も漏らさず撮りたいと思うのは当然のこと。しかし、みんなが撮るから自分も撮らなければと思うだけでは、自主性がなさすぎる。だが、みんなが知っていることを知ろうとしないのかと私が問われたら、やっぱりみんなが知っていることは自分も知ろうとするだろう。だから、この場にいたカメラマンを私が責めることなんてできないのだが、やっぱり、これって何か変だ。
きっと、こういうことだろう。みんなが撮るものは撮った上で、みんなが撮らないものを撮ればいい。みんなが知っていることは知った上で、みんなが知らないことを知る。それがプロというもの……だと思うのだが……。あまりにも変則スケジュールの取材が続き、頭が朦朧としてきた。
2007年06月28日
明日から全米女子オープンが開幕する。練習日の今日、宮里のラウンドについてロープ内を歩いていたら、日本人とおぼしき50代ぐらいの女性からいきなり声をかけられた。「あのー、すみません、アナタはアイ・ミヤザトのお母さんですか?」えっ、私がお母さん?ちょっとびっくりして「いえいえ、私は取材のために来ています」と答えると、「ああ、そうですか。私たちは沖縄県人会なんです」。沖縄から、このアメリカのノースカロライナまで応援にいらした?「いえいえ、この近く(ノースカロライナ州)のフェイエットビルという街に沖縄出身者の県人会があるんです」。何人ぐらい会員がいらっしゃる?「70名ぐらいいますよ」
まず驚いたのは、この70名という大所帯だ。はっきり言って、ここはアメリカ国内でもかなりの田舎。そんなところに日本人が何十名も所属する会があると聞いただけでもビックリなのに、沖縄出身者だけで70名というのだから、こりゃすごいことだ。
しかし、本当に驚かされたのは、ここから先。女性の言葉は放っておいてもどんどん続く。「それでね、私たちは沖縄出身の日本人がどんな活躍をしているのかなと思ってインターネットで検索したんです。そうしたら、アイ・ミヤザトって名前が出てきて、そのアイ・ミヤザトがこの大会に出るってことがわかって、それで私たち応援に駆けつけたんですよ。あらっ、ところでアナタはアイ・ミヤザトのお姉さんでしたっけ?」
「お母さん?お姉さん?」は、かなりずっこけたが、話を要約すると、彼女たちは検索をするまでは宮里のことを知らなかったということになる。日本ではスーパースター的存在、誰もが知る存在である宮里だが、アメリカの隅々までその名が伝わっているわけではなく、それは言葉を変えれば、世界はそれほど広いということだ。
日本で大流行する何々ブームというものは、日本の中では誰もが知るところとなるのだが、それが世界にまで波及するわけではない。その事実は、こんなふうに「あの藍ちゃん」を知らない日本人たちの生の声を聞かなければ実感しにくいかもしれないが、世界の壁というものは、いろんな意味でそれほど厚いのだ。
だからと言って、日本人が世界の壁を破れないわけでは決してない。米ツアーに挑む宮里は、だからこそアメリカで必死に戦っているのだし、そこで勝利を飾り、勝利を重ねていけば、アイ・ミヤザトの名は自ずと世界に知れ渡る。石川遼も日本では「王子」の名までつけられている存在だが、海外では今は「無名」で、そりゃ当たり前。だが、石川君が今後、プロの世界でも勝利を重ね、アメリカそして世界でも勝利を重ねれば、そのとき初めて世界が認めるプリンスになる。
だが、それには想像以上の時間がかかる。世界の壁は想像以上に厚いのだから。
そんな日が来るまで長い目で応援してあげるのが、本当のファンなのだと思う。
"どのように転売の生命保険に"
2007年06月23日
全米オープン明けの今週は、コネチカット州で開催されているトラベラーズ。その会場で、マスターズチャンプのザック・ジョンソンと話をしたときのこと。メジャーチャンプになって、何が一番変わったかと尋ねてみたら、彼はちょっと小声で「そりゃもう、取材は信じられないほど増えるし、なんだかんだといろんなことを頼まれて、それはそれは大変な人生になったよ」。
(プロアマ中、緊急連絡を受けている様子のジョンソン)
なるほど。そりゃそうだろうなあ。マスターズ優勝以前のジョンソンといえば、実力者ではあったけど、知名度はいまひとつだったわけだから、スポンサーなど企業からの依頼もメディアからの取材依頼も、まあ知れたものだったに違いない。が、マスターズチャンプに輝き、一夜明けたら、それまでとはまるで違うライフが待っていた……てなところだ。
ところで、そうなってくると、全米オープンチャンプとなったアンヘル・カブレラのライフも、がらりと変わるのだろうかという疑問が浮かび上がる。普通なら、「もちろん変わるよ」と言いたいところなのだが、カブレラの場合は、一つ大きな問題がある。それは、英語力。優勝インタビューなどをテレビで見たり聞いたりした方はお気づきだと思うが、カブレラは実は英語があんまりしゃべれない。どうしても伝えたいことが、ぎりぎりの英語でなんとか表現できるというレベルゆえ、彼の人となりや考え方を問うようなディープインタビューなどは一人では対応しがたいといえる。もちろん、通訳を介せばなんとかなる。だが、スペイン語と英語を自在にあやつり、しかもゴルフのことがわかっていて、カブレラの言いたいことを� ��確に通訳できる人材となると、現状では米ツアーではほとんどいない。たとえ1人ぐらいいたとしても、その通訳が常にカブレラのそばにいるとは限らないわけだから、事実上、カブレラを取り巻く環境は、ジョンソンを取り巻く環境が激変したほどの変化にはならないと思う。
(表彰式でのスピーチは、通訳入りで)
まあ、それはそれで、いいかな、とも思う。オークモントを制したカブレラのプレーぶりから、彼の人柄や心意気は十分すぎるほど伝わっていたし、ディープな部分がよくわからないミステリアスなラテン系チャンプなんていうのが一人ぐらいいても面白いではないか。
なんてことを思っているうちに、ひょっとしたらカブレラで一儲けしちゃおうなんてアグレッシブな誰かが、こりゃ絶好のビジネスチャンスと目をつけ、通訳兼????という形で出現することも十分考えられる。プロゴルフはエンタテイメントビジネス。あくまでビジネスの世界に、他のビジネスが介入してきてもおかしくはない。だが、プロゴルファーはアスリートで一人の人間だということまでを無視するようなビジネスにだけは巻き込まれてほしくない。カブレラちゃん、うれしい限りの日々だろうけど、そのあたりには十分ご注意ください!
(表彰式の後の、恒例の撮影会)
Photo/JJ Tanabe
2007年06月20日
全米オープンに出場した日本人選手は5名。その中で唯一予選通過した片山晋呉は、アメリカでもなかなかの人気者だ。米ツアーを主戦場としたことがないのに、これだけ「シンゴ」の名が飛ぶのは、正直言ってすごいこと。どうして片山がこれほど名前を覚えられ、声援を受けるかといえば、それは彼の個性のおかげだ。
「カウボーイハットのシンゴ」として覚えられた片山だが、最近は帽子のみならず、ベルトなどのアクセサリーでもアメリカ人ギャラリーの目を引いてる。たとえば、オークモントでの最終日。片山はシマウマ模様の地にキラキラ光る飾りがついたベルトをしていた。折り返しの9番グリーン。パットを終えた片山にロープ外がアメリカ人女性が声をかけた。「それ、ダイアモンド?」。プレー中だというのに片山は近くにいた自分のマネージャーに「本物って(英語で)何ていうの?」と尋ねた後、声をかけた女性に向かって「リアル・ダイアモンド!」と笑顔で返答。その女性は「オーッ!」。もちろん、本物のダイアモンドだと信じたわけではないだろうけど、メジャーの全米オープンで自分の質問にジョークを返してくれた日本人 選手シンゴのことを彼女は一生忘れないだろう。シンゴ人気はそうやって高まっているのだと思う。
ところで、人気のみならず高まっているのは片山のメジャーに対する姿勢と技術だ。昨年のマスターズのとき、「世界の頂点が見えてきた」と語った片山は、「高い球、止まる球が打てれば」という課題を自らに課した。以来、その課題をモノにするための努力を続け、今回は「ずいぶんスピンで止められるようになった」と手ごたえを感じ取った。それでもまだ自分は「メジャーで20位以内が狙えるレベル」であって、「トップ5を狙えるようになるには何が必要なのかと問われてもわからない」。これは正直な返答だったと思う。
どのように従業員のタスクのマクロを作成する
世界の頂点を目指し、まずは20位以内を目指し、それが達成できたら、今度は10位、5位……。それが現実的な目標設定なのだろう。今回、予選落ちした日本人選手の口から、「こういう(オークモントのような)芝で練習してないと無理ですよ」という言葉を聞いた。芝の違い、コースの違い、設定の違いは、出場する前からわかっていたこと。どうせ無理だというのなら、日本人選手が海外の試合に挑戦するのは無意味ということになる。そう感じさせるコメントには、はっきり言って落胆させられる。だが、片山は自分の主戦場が日本であることを踏まえた上で、「日本に帰って(ここで気づいたものを)吸収して練習してやっていく」と前を向く。それでこそ、賞金王だと感心させられた。
いつだったか、インタビューした際に聞いた「僕は1ミリでもゴルフがうまくなりたい」という片山の言葉が今でも忘れられない。今回の全米オープンでパットのグリップ方法やパターそのものを変えたことも、そんな彼の姿勢の表れだった。もちろん、せっかく予選2日間で好調だったのにグリップを変えた3日目はスコアを崩したことは「どっちに転ぶかわからなかったけど、悪いほうへ転んだ」と失敗を認めていたわけで、まあ、トライアルにエラーはつきものだ。臆せずにトライアル&エラーを繰り返しながら前進する片山。そんな彼の考え方が、あの奇抜でユニークなファッションにも反映され、そんな個性が溢れ出ているからこそ、アメリカのギャラリーも彼が好きなのだろう。
2007年06月15日
全米オープンはタイガー・ウッズが5位で好発進。日本勢も片山晋呉と今田竜二ががんばっている。そして、私が密かに応援していたのは、ちょっとオトボケのフィル・ミケルソン。昨年の雪辱に燃えるあまり、大会の3週間も前からオークモントでラフやバンカーの練習を重ね、そのせいで左手首を痛めてしまった。その後、左手首をかばって右手首まで痛めてしまい、恒例のファンへのサインも控えなければいけない状態。それでも棄権することなく、一生懸命プレーしているミケルソンがなんとも健気だ。
手首のせいでショットがダメなら、残るはパット。そのためにミケルソンはショートゲームコーチのデーブ・ペルツが開発した秘密兵器でオークモントの全グリーンを徹底チェックした。ペルツは元NASAの科学者。その知識と経験と15万ドルの費用をかけて開発された秘密兵器とは名づけて「ペルツメーター」。名前からもわかるとおり、スティンプメーターのようなもの。詳細は明かされていないが、スティンプメーターの半分の距離を転がして、グリーンのスピードなどをチェックできるもののようなのだ。しかし、「凄いものだ」とミケルソンが言ったので、思わず見学しに行ってしまったのだが、これがなんだか変なのだ。マシーンに3つのボールをセットし、マシーンを傾けて3つのボールをグリーン上に転がす。そして� �ボールが止まったところまでの距離を測るのだが、そのときに使うのは、なんと巻尺なのだ。うーん、NASA、科学者、15万ドル、ペルツメーター。どの言葉にもハイテクのムードが漂うというのに、最後に出てくるものが原始的な巻尺。これって、どこか変ではありませんか?
さて、もう1つ、全米オープンを眺めていて発見したのは、ジェイコブ・ロジャースという無名選手のゴルフバッグだ。選手の中にはアマチュアや学生がセルフプレーのときに使うようなスタンド付きのバッグを使っている人もいるが、これは往々にしてキャディが女性だったり父親だったりというときのためのもの。軽量だから担ぐのがラクなのだ。だが、このロジャースという選手は、スタンドバッグよりさらに軽量で、しかもスタンドもついていない筒状の細いバッグを使っているのだ。このバッグはトラベル用として売られているようなバッグ。一応、中にしきりはあるが、14本を入れるとキツキツで、なんだか不便そう。しかも、キャディは女性や老人ではなく、立派な男。おまけに、選手のロジャースよりキャディのほうが� �なりもよくて、一見するとどっちが選手かキャディか、よくわからないほどなのだ。うーん、これまた、なんか変。
まあ、どっちも変ではあるが、どっちも原始的っぽいものが近代の全米オープンで愛用されていたということで、「古き良きものは大切にしましょう」のメッセージなのだと受け止めることにしましょう!
2007年06月13日
いよいよ、全米オープンウィークになった。オークモントは94年当時とはまったく異なる姿を現し、選手やギャラリー、関係者を驚かせている。なにしろ5000本近い木々が伐採されたため、広々としたパノラマのよう。しかし、そのオークモントが広く優しい心で選手たちを迎えているかといえば大間違い。ラフは深いし、密度は濃いし、バンカーはあり地獄のように深いし、グリーンは速いし……こりゃ大変だ。今田竜二も「1日に2オーバー、3オーバーで毎日回ったら優勝争いできるって感じですね」。それほど、今年のオークモントは難しそうである。
数理計算上の担当者は何ですか
そんな中、優勝候補の筆頭、タイガー・ウッズの練習ラウンドをしばらく取材した。技術的には特に何を変えたとか、クラブを変えたとか、そういったものは見当たらない。もちろん、それがタイガー。よくメディアからは「全米オープン対策は何?」「メジャー仕様のクラブセッティングですか?」といった質問が飛び出すのだが、タイガーは普段からメジャーに向かって準備をしているわけだから、いざメジャーだというときに、その場しのぎで何かをするということは、まずないのである。
しかし、1つだけ、新しいものを発見!それはゴルフバッグだ。初めて目にしたそのバッグはシルバーとダークブルーのツートーン。で、「enclave」というロゴマークがどーんと入っている。これは、ビュイックの新車の名前だ。
アメリカの自動車メーカーといえば、GM、フォード、クライスラーが御三家だが、フォードは大赤字ゆえ、今年はフィル・ミケルソンの胸からもフォードのロゴが消えている。そして、クライスラーはダイムラーへ身売り。それゆえ、昨年までは米PGAツアーにクライスラーの冠大会が3試合あったのに、今年はボブ・ホープ・クライスラークラシックのみに減ってしまった。そんな中、GMはなんとか健闘しており、その傘下のビュイックも必死に奮闘中だ。
以前はビュイックのロゴが入ったバイザーやキャップをかぶっている選手も見かけたが、最近はビュイック契約というとオンリー・タイガー。苦しい立場のビュイックは、それこそ「タイガー様々」で賭けに出ているのだろう。タイガーのニューバッグを眺めながら、そんな企業努力をひしひしと感じていたのは、ちょっぴり変わり者の私と相棒カメラマンのJJ田辺ぐらいだろうけれど、ともあれ、露出多大な全米オープンでビュイックの業績が少しでも上がりますように……なんて思ってしまった。
2007年06月08日
今週は全米女子プロ選手権。今日、初日はミッシェル・ウィーが1オーバー47位だったが、なんだか彼女がかわいそうでならない。先週のギン・トリビュートで棄権したウィーに対し、「大人たち」のバッシングが続いているからだ。「大人たち」はLPGA規定の88以上を叩きそうだったから、それを避けるために棄権したんじゃないかという嫌疑の目を向けている。もちろんウィー本人は「88なんて叩くわけがない」と言い張り、棄権したのは元々痛めていた手首が痛かったからだと主張。そんな中で、今週のメジャーに挑むウィーの心情を思うと、やるせないものを感じてしまう。
手首が痛かったからだと言っている以上、もうそれでいいではないかと思う。米PGAツアーの「大人」の選手たちだって、自らのあまりの大叩きにやる気をそがれ、棄権することがないかと言えばうそになる。だが、そのたびに「いっぱい叩いたからやめたんだろう?」と勘ぐられ、ああだこうだと言われたら、「大人」のプロたちだって精神的に参ってしまうだろう。
(昨年のジョンディア・クラシック)
叩いちゃったから棄権するという行為が、いいことだとは決して言わない。そんなことを言うつもりは毛頭ない。プロである以上、そのままプレーを続行するのも棄権するのもその選手自身の意志次第。手首を痛め、メモリアルを棄権したフィル・ミケルソンは、ケガによる棄権は初めてのことだった。そんなふうにぎりぎりまで棄権という選択肢を選ばないプロもいるし、ちょっと叩くとすぐ棄権するプロもいる。が、最終的には、「あの選手はそういう選手なんだな」という評価が良きにつけ悪しきにつけ勝手にできあがるのだから、やっと高校卒業に至ったばかりのウィーを現段階で「大人たち」が責めたり追い込んだりしなくてもよいだろう。
もちろん、ウィーが明らかにルール違反を犯したとか、マナー違反を犯したとか、そういう行為に対するバッシングなら正当だ。けれど、先週の棄権に対するバッシングはあくまでも「推測」に基づくものだ。
ウィーが華々しく男子ツアーの試合に登場し、惜しくも予選通過を逃したなんてころは、持ち上げるだけ持ち上げておいて、ちょっぴり風向きがおかしくなると、今度はネガティブトーンばかりで取り沙汰する。それは、いささか大人げない。
昨年、男子ツアーのジョンディアに出場したウィーは、あのときも棄権を余儀なくされたのだが、熱射病でボロボロの体を必死に動かしながら、プレーを続けていた彼女の悲壮な姿は忘れられない。そりゃ、あの程度の暑さでまいってしまうのは、プロとしては体力不足かもしれないし、そこに男女の壁があるのかもしれない。が、少なくとも、そんなふうに必死だった彼女は、今だって必死なのだ。百歩譲って、88を叩くことを避けるために棄権したとしても、それはスーパースター化された彼女が今後もプロの試合に出続けるための策であり、そうするしかなかったということだ。その行為を「ずるい」「せこい」と否定的に見なすか、それとも「仕方がない。そんなこともあるよ」と好意的に受け取るか。それだって「大人たち」� �気持ち次第であろう。
ウィーを取り巻く昨今の厳しい状況を眺めていると、すぐさま連想されるのは、日本で今、大ブレーク中のハニカミ王子の未来だ。すでにテレビ局の暴走が問題になっているが、今、そんなふうに「王子」「王子」と言っている「大人たち」が、いつか石川君が不調になったとき、彼にどんな目を向け、どんな言葉をぶつけるのだろうと思うと、ちょっぴり怖くなる。実際、今、ウィーが置かれているのは、そういう状況なのだから。
だからこそ、今週はウィーにがんばってもらいたい。手首はまだ痛むのだろうから、優勝争いには届かないかもしれないが、少なくとも先週の棄権が88回避のための茶番だったという声を否定できるだけの成績を出してほしいと思う。
(今年のソニーオープン)
Photo/JJ Tanabe
2007年06月05日
ツアーキャディのメインの収入は、もちろん選手から支払われるキャディフィ。これは、日当いくらとか、1週間でいくらという具合に支払われ、契約方法はそれぞれの選手&キャディの間で個別に決められる。賞金の10%前後が、そうしたベースのキャディフィのほかに支払われる場合もあるし、予選通過して賞金をゲットした場合は、ベースフィは無関係になったりすることもある。まあ、とにかくキャディフィというのは、選手とキャディが事前に取り決めをしたうえで支払われるギャラなのだ。
が、実はキャディたちには、ときとしてちょっとした副収入が入る場合がある。これは選手からではなく大会側やスポンサーから支払われるものだ。
メモリアルでは、キャディが大会ロゴの入ったキャップをかぶって試合に出ると、ボーナスが支払われるという珍しいシステムがある。予選2日間は1日100ドル。決勝進出すると1日400ドル。つまり、4日間、このキャップをかぶると合計1000ドルがもらえるというわけで、キャディの副収入としては結構な額だ。
トム・レーマンのキャディのアンディは、大会ロゴの入ったバイザーを着用していた。
だが、そんな金額には目もくれないキャディもいる。たとえば、タイガーのキャディのスティーブなどは、タイガーのスポンサー企業からロゴマークを見せることで何がしかのお金を得ているようだ。だからスティーブは、18番グリーンまで来ると、必ずといっていいほどキャディ用のビブをさっさと脱いでしまう。あのビブは厚手のものが多いから、最初のうちは暑くて脱いでいるのかと思っていたのだが、そんな単純な理由ではなく、あれはスティーブのシャツについている企業ロゴをテレビに映させるためなのだ。
それでスティーブがいくらもらっているかは不明。お金に関することは、選手からも滅多に明かされることはなく、ましてやキャディがスポンサーから得る金額となると、キャディが口を割るはずはない。
いずれにしても、こうしたキャディの副収入というものはテレビに映ってナンボのもの。選手の活躍がなければテレビにも映らない。ということで、最終的には選手を支えてこそキャディの副収入は総合的に増えるという当たり前の結論にたどり着く。だからキャディ君たち、副収入ばかりに目をくらませることなくボスをきっちり支えてあげてね。
2007年06月02日
メモリアルの初日、フィル・ミケルソンが途中棄権してしまった。ミケルソンがラウンドの途中で棄権したのは、なんとプロ入り以来、初めてのこと。かつて病気で第2ラウンド終了後に棄権したことが1度だけあるが、ケガで棄権したのも、今回が初めてだった。
だから余計に心配になる。棄権の理由は左手首に痛みを感じたためということだが、この左手首、メモリアルのラウンド中に痛めたわけではなく、先週、全米オープン会場となるオークモントで練習ラウンドしたときに痛めたのだそうだ。オークモントには178個ものバンカーがあり、有名なチャーチ・ピューなる縦長の段々畑風バンカーもある。ミケルソンはオークモントでバンカーやグリーン周りのラフからショットしすぎて手首を痛めてしまったのだという。
今年の全米オープンは、昨年の全米オープン最終日最終ホールで崩れたミケルソンにとって雪辱戦となる。だから気合いが入って当然。しかし、だからと言って、早々に練習したら手首が痛くなっちゃった……では困るじゃないの?まったくもう、直情型、正直者のミケルソンは、だからこそ放っておけない存在だ。
それにしても、メモリアルのプロアマの日、ミケルソンはメディアの共同インタビューを延々待たせながら、何をしていたかというと、ギャラリーや子供たちへのサイン。それはそれはすごい人だかりで、こんなの全部サインしてたら手首が腱鞘炎になっちゃうよ、と思いながら眺めていたのだが、ファンサービス精神旺盛な彼は、いつまでもいつまでもサインし続けた。ひょっとしたら、オークモントでの練習ではなく、サインの嵐で手首を痛めたのではないかと思ってしまうほど。
メモリアルを棄権した後、自宅のサンディエゴに戻ったミケルソンは、すぐさまMRIやCTスキャンによる診察を受け、骨に異常はないと確認された。が、炎症はまだひどく、例年なら必ず出る全米オープン前週の試合を、今年は見合わせることになりそうだという。
うんうん、休んだほうがいい。いくらメジャー前週の試合に出てウォーミングアップするのがミケルソンのルーティーンとはいえ、これ以上、無理を重ねたら、下見練習で手首を痛め、前週の試合で力尽き……ついには全米オープンでプレー不能なんてことになりかねない。
少しお休みしなさい。そんなに焦ったら雪辱どころか、またまたトンマなことになっちゃうよ、フィル君。でも、そんなフィル君だからこそ、「アナタが心配」と感じる女性ファンは多いのだろうけど。
ファンサービスも、ここまでやれば立派!
Photo/JJ Tanabe
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